恋する暴君クリスマスパーティー!2016 ~恋するケモミミアンソロジー~

24節気 『冬至 とうじ』  72候 『麋角解 さわしかつのおつる』  期間 12月26日~30日頃

大鹿の角が落ちて生え変わる


こんにちは。本日は予告していました通りクリスマスパーティーが開かれています。
恋する暴君が大好きな人たちが集まって、ケモ耳でお祝いしちゃおう○o。(○゚ω゚)ノャァヽ(゚ω゚○)。o○ってイベントです。
超超超気になる、このパーティーへの招待状はコチラ

本当に沢山の方が参加されてますので、皆様どうぞ楽しんで来てください(*・`ω´・)ゞ

私も参加させて頂いてまして、この下にこっそり載せときます。お暇な時にでも読んでやってくだされば嬉しいです。







『オオカミさんとクマさんと』


 しばらく続いた長雨の後、厚い雲の隙間から太陽が顔を覗かせると、森に棲む獣達は窮屈な巣穴から外の世界へと一斉に飛び出して行った。

 他の獣達と同様、外に出ることが出来なかったオレ達は、群れ全員分の食料の確保と、運動不足によるイライラを解消しようと山中を駆け巡った。途中、クマの好きな木の実を見かけると採っておくのも、いつの間にか身についてしまった習慣だ。
 クマは元気にしているだろうか。ずっと巣穴に籠りっきりで会いに行ってない。あいつは確かにこの森最強の生き物ではあるのだが、頼りないというか、危なっかしいというか・・・何となく放っておけない奴だ。
 一度気になりだしたらそのままにしておけない性分だ。翌朝早くにオレは群れを離れ、クマの住処へと向かった。狩りのついでに集めた好物を携えて。これを見たらあいつきっと喜ぶぞ。そう思うと自然オレの頬も緩み、駆ける足も速まっていく。



「お~い!クマいるか?」
 洞穴に着くと、いつものように声をかけながら中へ入った。
 辺りをきょろりとを見渡したがクマはいないようだ。喰いもんでも探しにいっているのかと少し残念に思った。だが、折角来たのだ、とその場に腰を落ち着け、奴の帰りを暫く待つことにした。土産の木の実なんかはその辺に転がしておいた。
 ―――ふと、洞穴の奥から、オレ達以外の獣の匂いが鼻をついた。あと、微かに血と薬草の匂い。
 クマの洞穴はいつも薬草の匂いが漂っていたから、そっちは大して気に留めていなかったんだが・・・。クマ以外の獣と血の匂いは気になる。まさかあいつを追い出してここに住み着いた奴がいるんじゃねえだろうな。
 オレは少し警戒しながら奥へと進んだ。


 確かにそこにいたのはクマ以外の獣ではあったが、それは仔タヌキで・・・。そいつはクマの寝床でくうくうと、誠に呑気そうな寝息を立てていた。
「・・・・・・」
 あいつはまた何か拾ってきたのか?まさかこのチビは食料ってわけじゃねえよなぁ。
 と、オレは訝しく思いながら、起きる気配をみせない仔タヌキを上から覗き込んだ。本当に良く眠ってやがる。こいつからプンと強い薬草の匂いがした。恐らく怪我をした仔タヌキを見つけたクマがこの洞穴まで連れ帰り、手当してやったってとこだろう。
 クマらしいな・・・ふっと笑みが漏れた。このチビタヌキを驚かすのも何だし、外でクマの帰りを待っていようかと立ち上がった。
 だがオレの似合わぬ気遣いを無にするかのように、仔タヌキは目を覚ましてしまう。そいつは大きな目を見開いたまま、顔も身体も凍り付いたように、ピクリとも動かない。
「おい・・・・」オレはなるたけ優しい声を出した。喰うつもりはないと伝えたのだが、固まったままのこのチビの耳に、果たして届いているかどうか・・・。

「ボボボッ・・ボクを食べても美味しくないです」

 ―――やっぱり届いてなかった・・・。
 消え入るように小さな声が、震える唇から零れ出た。目を逸らすことが出来ないのか、大きな目はオレを捉えたまま。表情のない能面のようなその顔からは血の気が引き、今にもバッタリ引っ繰り返ってしまいそうだ。
 恐怖で失神寸前のタヌキを前にして、オレもどうしたもんかと途方に暮れた。とっとと洞穴から出とくんだったと今更後悔しても、もう遅い。
 互いに身動きできないまま、睨み合いが続いたその時だ。


「ただい・・・・・うわ~!オオカミさん!その子を食べちゃダメです~!」
 
 クマの声だった。
 呑気な声から一転、それは悲鳴とも言える叫び声に変わり・・・・・・お前、オレの事を一体どんな奴だと思ってんだ?


「はぁ~。ホントにビックリした」
 クマが首を竦めながら溜息交じりにこぼした。
「お前も大概失礼だよな。なんでオレがお前の家にいるもんを、家主の留守中に勝手に喰っちまうなんて思うんだ?しかも、ちゃんと怪我の手当てもされてて客って解ってるのに」
 オレは苦虫を噛み潰したような顔で目の前に出された酒を飲んだ。これはかなこの作った果実酒で、甘い味を気に入ったクマにもお裾分けしたやつだ。
「だってオオカミさん、その子をつまみ上げてたし・・・」
「こいつが気を失いかけてたから支えてやっただけだ!お前もお前だ!何がボクは美味しくないだ。オレは喰うつもりはないって、あの時ちゃんと伝えただろうがっ!」
 ブツブツ文句を言いながら酒を呷った。クマ好みの酒はオレには甘すぎたが、そんなこと今はどうでも良い。
 怒り心頭のオレの様子に怯えているのだろう。大きなクマの背中に隠れた仔タヌキはプルプル震えながらごめんなさいと謝ってきた。クマも誤解してごめんなさい、と一緒になって頭を下げている。
 そんな二人を横目で見ながら「それで・・・何でまたお前はこのチビの面倒をみてんだ?」と、オレはそろそろ本題に入ることにした。いつまでもプリプリ怒っているわけにもいかねえからな。
「ああ、それはですね、先日雨が上がった後、食べ物を探して山を歩いてたら川の淵に流れ着いているこの子を見つけちゃって。怪我はしてたけどまだ息もあるみたいだったんで、取り敢えず連れて帰って手当をしたんですよ」
「お前って・・・・」オレが言いかけで止めた言葉の続きを待つように、クマはきょとんと首を傾げている。何でもかんでも拾ってくるんじゃねえよ・・・とは言えなかった。オレもこいつに拾われ、命を救って貰った口だ。
「―――それで、これからどうすんだ?」
 オレは呆れたように溜息を吐きながらクマに問うた。まさかこれからもずっとこの洞穴でチビの面倒をみるわけでもあるまい・・・と。
「もう少し怪我が治ったら、この子を住んでた山に返してあげようかなって」
「こいつの住んでた場所は解ってんのか?」
「いえ、詳しくは解らないんですけど・・・多分、川の上流の方の山だと思うんですよね」
「まあ、普通に考えたらそうだわな」
「この子の親ごさんも心配してるだろうし、流される前に一緒にいたっていうお友達のことも気になるから、なるべく早く出立したいと思ってます」
「ボク、もう怪我は痛くないです。いつでもおうちに帰れます」
 チビがクマの服を掴んで訴えている。しかし、こう言ってはなんだが、ちっとも必死さが伝わってこない。このチビの表情筋はちゃんと動いているのか?さっきからずっと無表情だ。オレと出会った時も凍り付いたように動かなかったが、もしかしたらあれが標準仕様だったのかもしれない。
「うん・・・でも・・まだ長い距離を歩くのはしんどいでしょ?旅の食料も用意しなきゃいけないし。もう少しだけ我慢してね」
 もう慣れてしまったのか、こいつの無表情を気にした様子もなくクマがそう言うと、チビは地面に視線を落とした。表情からは読み取りにくいが、多分しょげ返っているのだ。まだまだ子供だ。早く家に帰りたいよな。

「だったらオレも一緒に付いて行ってやろうか?」
 気付くとそう口にしていた。自分の言葉に驚いたが、それは名案に違いない。チビが疲れたら、オレとクマが交代で負ぶってやればいいし、オレ達を襲撃するようなバカもいないだろう。
「えっ・・・だけどオオカミさん、群れの方は良いの?」
 クマは躊躇いを隠さずそう言った。
「ああ、まあ2、3日ならオレがいなくても大丈夫だ。ここ数日の狩りで獲物も沢山獲れたしな。ああ、ついでにお前の好きな木の実も持って来てやったから」
 そこに置いてある、とオレが洞穴の奥を指さすと、クマはありがとうございますと嬉しそうに顔を綻ばせた。
「・・・それにそのガキをいつまでもここに置いとくわけにはいかねえだろ?」
 オレの言葉に暫く考え込んでいたクマも「・・・そうですね。オオカミさんが一緒に行ってくれるのならオレも心強いですし・・。お言葉に甘えて早速明日にでも出立しますか」
 そう言って、にこりとチビに笑いかけると、こいつも突然の展開に戸惑いながらも少しだけ嬉しそうに目元を和ませた。
 だけどまだクマの後ろに隠れたままで、怯えた視線はオレから外さない。無表情ながら警戒されていることだけは解る。こんなことで一緒に旅ができるのかと不安になったが・・・まあなるようになるさ!と早々に結論を出し、一旦群れに帰ることにした。またオレの都合で群れを留守にするのは気が引けたが、クマのためだ。仕方ない。



 翌朝早くにクマの洞穴へとやってきた。クマも既に出立の準備は済ませていたらしく、入口の前でオレを待っていた。
 オレも自分用の保存食をいくらか用意していたが、クマは二人分とあって中々の大荷物だ。それらを背負い、仔タヌキの手を引く姿はとても獰猛な獣には見えなくて、思わず笑ってしまった。オレが笑うのをチビは不思議そうな目で見つめていたが、少しして、はにかんだ笑顔を見せた。なんだ・・・そんな顔も出来るんじゃねえか。

 大きなクマとオオカミ、それに仔タヌキと、一風変わった旅の仲間は、先ずは川の上流へと向かうことにした。
 やっと家に帰れると最初は元気に歩いていたチビも、疲れたのか次第に無口になっていった。それに気付いたクマが背に負っていた荷物を前に回し、空いた背にチビを負ぶってやる。そのまま上流へと進んでいき、適当な場所を見つけ弁当にした。クマは包の中から木の実や魚を、オレは持って来ていた肉を食べ、川の水を飲んだ。
 暫く休んだ後、再び歩き出す。今度はオレがチビを負ぶってやろうかと申し出たが、当のチビに激しく怯えられ、やっぱりクマが負ぶうこととなった。少しムカついたが、代わりにオレはクマの荷物をもってやった。そうして暗くなるまで一日歩き通し、疲れ果てたオレ達は大きな木の根元で休むことにした。クマを真ん中にして三人は川の字になって眠った。


 翌日はまた朝早くから歩き始めた。この辺の景色に見覚えはないか、知った匂いがないかと確認しながらの道中なので、進むスピードはそれほど速くはない。だが、チビも今日は朝から頑張って歩いている。
 半日歩き、休憩をとっているとチビが急にそわそわし始めた。覚えのある匂いがするのか、ふんふんと盛んに鼻を引きつかせている。
「おい、どうかしたのか?」
 声をかけても気もそぞろな様子で鼻を引きつかせながら、辺りを探っている。
 クマとオレはそんなチビを注意深く見つめていた。
 突然――――山の奥へとチビは駆けだした。
 小さな体で飛び跳ねるように駆けて行くものだから、藪に隠れて姿を見失ってしまわないよう、オレ達も必死になって追いかけた。

「ケイゴ!」
 チビが大声で叫んですぐ、奥の方から「サトル!」と別の声が聞こえて来た。
 もしかして近くに家族がいるのかと、オレ達3人は声のした方へと目を移す。
 すると、目の前の藪ががさがさっと大きく揺れ、キツネが飛び出してきた。
 キツネの姿を目にした途端、チビは勢いよく抱きついていった。キツネも嬉しそうに抱きしめ返している。
 良く無事で・・・と再会を喜んだのも束の間。オレとクマの存在に気が付くとチビを背後に隠し、後ずさった。怯えながらも必死にチビを庇う姿は本物だ。
 一方、背に庇われた格好のチビは懸命に大丈夫だから、とキツネに訴えているようだ。恐らくオレ達のことを説明しているのだろう。暫くして、キツネの目許から少しだけ険しさが和らいだ。



「サトル・・本当にこいつ等に助けて貰ったのか?」それでも疑わし気な質問に対して、
「そうだよ。このクマさんは、川に落ちて流れ着いたボクを拾って手当をしてくれたの。おまけにボクを家に帰そうとここまで送ってくれたんだよ」
 淡々と答えるチビの姿に、残念ながら感謝の気持ちは微塵も感じとれない。
「でも、クマとオオカミだぞ」
 こちらもまだ信じ切れてはいないようだ。それも当然とは思うが、まるでオレ達がこいつを攫って行ったかのような口ぶりに、眉間の皺が深くなる。
 キツネの態度に焦れたチビは彼の背から抜け出すと少し駆け、クマの腕にしがみ付いた。そんなチビの頭を、クマは空いた方の手でぐりぐりと撫でる。
「ね?大丈夫でしょ」
 仲の良い二人の様子に、とうとうキツネもチビの言い分を認めたようだった。
 詰めていた息を大きく吐き出すと、肩の力を抜いた。
「まったくサトルときたら信じられないよ。川に流されていったと思ったら、こんな風に突然帰ってくるなんて。しかも凄い引率者付きで・・」
 キツネの呆れたような言葉に、ゴメンねと頭を掻きながらチビは説明を続けた。
「オオカミさんはクマさんととても仲良しでね、ボクを送る手伝いをしてくれたんだよ」
 オレはチビの言葉に面映ゆいものを感じながら、少しだけクマ達の傍に寄って行った。ピクリと緊張を走らせたキツネを目の端に捉えていたが、それは敢えて無視した。
「おい、チビ。このキツネがお前の言ってた友達なのか?」
 オレの問いかけにチビが大きく頷く。
「てことは、近くにお前んちがあるってことか?」
「多分そうだと思うんだけど・・・」と、少しあやふやそうなチビにキツネが笑いかけた。
「ここはちょっとサトルんちからは離れてるよ。毎日少しずつ範囲を広げてお前を探していたからな。ここらに覚えが無くてもしょうがないよ」
 この言葉にホッとしたようなチビの頭をクマが良かったね、ともう一度くしゃりと撫でた。だったらもう少し家の近くまで送って行こうかと相談していると、遠くから「ケイゴ君!何処だ~」と叫ぶ声と、藪をガサガサ掻き分ける音が段々近づいて来る。声のする方に顔を向けた途端、オレ達の目の前につがいのタヌキが転がるように飛び出してきた。
「ケイゴ君!叫び声が聞こえたけどだいじょ・・・」
 藪を突っ切って駆けて来たのであろうそいつらは、体中に葉っぱや泥を付けボロボロの様子だった。だが、一瞬にしてオレ達に視線を走らせると彼らの一方はクマに体当たりをブチかまし、チビを自分の懐に抱いた。父親だろうもう一方は、オレを睨み付けたまま、歯をむき出しにして威嚇している。


 またか・・・と思った。
 このパターンを幾度繰り返せばよいのかと嘆息が洩れる。
 オレ達の困惑が伝わったのだろう、キツネが助け舟を出してくれた。
「おじさん、おばさん、大丈夫ですよ。サトルは彼らに助けられて、ここまで送って来てもらったみたいです」
 キツネのこの言葉に、チビは無表情のまま頭をぶんぶん上下に振っている。恐らく、キツネの言う通りだと言いたいのだろう。
 両親はとても信じられない様子だったが、そろりと子供を抱え込んだ腕の中から解放すると、本当なの?と尋ねるように首を傾げた。そんな母親にチビはこっくりと頷くことで同意を示した。
 まだ半信半疑ではあるようだが、彼らの身体から少しだけ緊張が去ったようだった。
「あの・・」その様子を見届け、クマは遠慮がちに話しかけた。
「この子のお父さんとお母さんですか?」
 彼らはその問いかけに、ぎゅっとチビを抱きしめることで答えた。
「だったら良かったです・・。この子、大雨の後、オレの住んでる所まで川を流されてきたんです。あちこちケガをしてたので簡単な手当はしておきました。―――あっ!それとこれは打ち身にきく湿布です。毎晩取り換えてあげてください」
 熊は大きな身体を丸めてごそごそと包の中から薬を取り出し、その使い方を説明しながら手渡している。本当にこいつはどこまでお人好しなんだか・・・オレが呆れ返っていると、今度はチビの方に屈みこんで話しかけた。
「お父さん達が見つかって良かったね。でも、もう危ない所で遊んじゃダメだよ」と、お弁当に持って来た木の実をその小さな掌に乗せてやる。チビはギュッと拳を握りしめ、そのままクマの首根っこにしがみ付いた。もう別れの時なのだと、チビにも解ったのだろう。

 そうしてチビ達と別れの挨拶を済ませたクマは、オレの方にトコトコやって来ると、オオカミさん一緒に来てくれてありがとう、と礼を言った。
 ―――ああ、そうだよな。クマはこういう奴だった。
 オレは礼なんか要らん・・とクマの頭をパチリと軽く叩き、タヌキの家族の方へ顔を向けた。
「おい、チビ!もしお前が今後オレ達とは別のクマやオオカミに出くわすような事があったら、すぐ逃げろよ!お前みたいなチビ助、ぼけっとしてたらパクリと一口だからな!こんな甘っちょろい奴ばかりじゃねえ。山で生きるってのは厳しいもんだ。その事を絶対に忘れんな!」
 大きな目を更に大きくしてオレの忠告を聞いていたチビは、解ったという風に黙って頷いた。
「もう母ちゃん達に心配かけんじゃねえぞ!」
 最後にそれだけ言って、オレは「さあ帰るか」と隣にいたクマの背中を勢いよく叩き、くるりと踵を返す。
「ありがとう!」だの「元気でね」だの、お礼の言葉が次々叫ばれているのを背中で聞きながら、オレ達は急ぎ足でその場から離れて行った。




 クマの洞穴に帰り着いたのは日が傾き始めた頃だった。暗くなりかけていたが思っていたよりも早く着いた。帰り路はただ川に沿って歩けば良かったからだろう。

「じゃあなクマ。また来るわ」
 洞穴の前で別れを告げ、オレは自分の群れに帰ろうとした。まだ太陽も空の下の方に見えているし、慣れた道だから多少暗くても問題はない。
「―――はい。気をつけて帰ってくださいね」
 クマの見送りの言葉に頷くと、オレは駆けだした。数十メートル進んだ所で、チラッと後ろを振り返る。するとまださっき別れた場所にクマは突っ立ったままだ。そのポツネンと佇む姿が頼りなげで、オレは奴を一人残していくことに妙な罪悪感を覚えてしまった。
 その場でふいっと立ち止まり、ガリガリ頭を掻くともう一度クマの洞穴の方へと身を翻す。オレが再び奴の目の前に立つと「オオカミさんどうかしましたか?」とクマは心配そうな顔をみせた。
「あぁ~帰ろうとしたんだけどよ・・。もう随分暗くなっちまったし、今日はお前んちに泊まっても良いか?群れの奴らには2、3日留守にするって言ってあるから問題ねえし」
 途端、クマの顔が綻んだ。本当に嬉しそうに笑うものだから、見てるこっちの方が恥ずかしくなっちまう。頼むからそんな顔をオレに向けてくれるな。こんな時、オレはどうすれば良いのか解んねえんだから。困ったオレは、照れ隠しのようにグイッと乱暴にクマの肩を抱き寄せた。
「まだ酒はあるんだろ?今夜はとことん飲もうぜ!」





 雨でずっと巣穴に閉じ籠っていた時のこと。チビを拾った時のこと。群れの様子。
 話したいこと、聞きたいことがオレ達には山ほどある。
 再会を果たしたあのタヌキの親子も、きっと今頃はチビの冒険物語で盛り上がってるに違いない。
 いっぱい、いっぱい話そう。
 一緒に笑いあって。
 そうして、会えなかった時間を埋めていこう。
 
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